ビジネス予測の目的とは

 今回はビジネスにおける予測という点について考えてみたいと思います。ビジネス予測をどう役立てるか?に関しては大分、企業間で認識の違いがあるように見受けられます。前回の記事でも触れましたが、特に日本企業の多くは予測の結果に重きを置く傾向があるように思います。しかしながら、実際、ビジネスの予測に支配法則が明確な気象予報のような精度を求めるのは無理があります。では、ビジネス予測を立てることに意味はないか?と問われれば、”それもまた否なり”ということではないでしょうか?。日本では、こうした”ビジネス予測”に関する意義や考え方について体系的に教えてくれるところはなさそうですが、予測には少なくとも次の3つの機能があり、その結果の評価には多面的な考慮が必要であると指摘されております(関連文献:S.Makridakis and SC. Wheelwright, "Forecasting methods for management", 1989, John WileySons,Inc.等)。

1. 未来の予言的機能
2. 未来への妥当な目標を設定し、その達成に向けて計画を策定・実践・フィードバックするという規範的機能
3. 未来についてあり得うる可能性の幅を想定し、幅内のどのケースが起こっても対処できるように準備するという管理的機能

 私自身も、現状の多くのビジネス予測に対しては、1の未来の予言的機能への過大な期待よりは、むしろ、2や3の機能に主点を置くのが妥当で、予測値の評価に過度に傾注するのは得策ではないと考えております。さらに、ハイテクビジネスでは、その期間に大きな影響を与える影響因子を理解するという要因把握機能も予測の重要な目的と言えるかもしれません。

 また、予測のKPIへの総合的な効果が重要で、ビジネス予測を生かしている企業では、予測が纏わる一連のビジネスプロセスの構築が企業の競争優位性の一部となっているかと思います。Monash大学(オーストラリア)のRob J Hyndaman教授は、”Forecasting: principles and Practice(2014, OTEXT.COM)"の中で、”予測は経営管理者の意思決定の重要なプロセスであり、有効に機能させるには、その組織の継続的サポートが必要不可欠である”と述べています。昨今、AI-ビックデータの台頭により、高い予測機能の実現が競争優位性となるような雰囲気を漂わせていますが、実際に高い予測機能を企業活動に有効に機能させるには、少なくとも2及び3を網羅した、一連のビジネス予測プロセスの構築に継続して注力している企業が、従来と変わらず、その恩恵に預かるのでしょう。

2018年08月02日