予測情報の捉え方の違い

 今回は予測情報の捉え方に関して述べてみたいと思います。私は長年に渡り、半導体・エレクトロニクスなどのハイテク市場の予測を行ってきましたが、日本企業のクライアントの方々の予測情報に対する考え方と欧米系企業のクライアントの予測情報に関する捉え方の違いを日常的に感じておりました。日本企業のクライアントの方々は、全般的に予測値に対する関心が高く、”予測の精度はどのくらいなのか?とか、”過去10年に渡り、予測と市場実績の比較データを提出してください”などの(厳しい)質問をしばしば頂いておりました。一方、欧米系企業の方々からは、例え、解離した予測値であっても、”その前提条件は何か?”とか、”どういうモデルによるものか?”など、予測プロセスや合理性に関する問い合わせが多かったようです。

 また、普段、さまざまな学会や研究会にて、数理モデルや分析手法に関して勉強させて頂いておりますが(理解の度合いは疑問ですが、分野の幅広さでは負けません(笑)...)、日本では、予測手法や予測事例研究をミッションとして研究しているアカデミックな学会はないのではないかと思います(私の知る限りですが)。もちろん、予測研究については、OR学会、応用統計学会、計量経済学会等で該当する手法に応じて議論されておりますが、”予測”という共通研究テーマを主題としている学会はないのではと思います。

 一方、米国では、International Institute of Forecasters(IIF:https://forecasters.org/)など、予測に携わる実務家や予測手法を研究する学者、研究者が発表・議論する学会がいくつかあり、Journal of business forecastingやInternational Journal of Forecasting などの査読付き論文誌も発刊されております。私も数年前までは、IIFに属しており、何度か、海外の学会で発表させて頂きましたが、発表分野も多彩で、金融、経済、ビジネス・マーケティング、気象などのさまざまな予測に関連した研究発表が行われております。また、キーノートとして、著名な統計学者や経済学者のスピーチがあったり、ワークショップとしてさまざまな予測手法のチュートリアルが企画されているなど、予測研究に対する熱い取り組みを感じさせるものがありました。ただ、日本からの参加者は、世界から総勢300名は越える参加人数に対して、5-8名程度(現在はわかりませんが)で、特に、日本企業からの実務家の参加は、1-2名程度と極めて少ない人数でした(海外企業からは多数の参加者がおりました)。一度、レセプションの際に、大会委員の教授先生から、”日本でも開催したいのだが、なぜ、日本から参加者が増えないのか?”と質問され、困惑いたしました。

 偏見かもしれませんが、日本では、”予測”というと、ギャンブルの予想や様々な”占い”の類がまず連想され、アカデミアのテーマとしてはなじまないのかもしれません。以前に、IIFで知り合いになった経済学部の某教授に理由を伺ったこともあるのですが、やはり”アカデミックな研究テーマとしては、低く見られがち”とのご意見を聞いたことがあります。こうした予測研究に対するアカデミアにおける土壌の違いも、前にも触れた日本企業の”経営戦略部門のデータリテラシー”の現状にも、根底では関連しているように思います。

2018年07月02日