前回のブログでは、従来のビジネス利用では問題視されていなかったIT調査企業による市場評価値の課題について述べましたが、引き続き、今後の課題解消の方向性に関して所見を述べたいと思います。個人的には、以下の2点に関する対応が必要かと考えており、今後、何らかの動きが起こることを期待しております。
評価値に対する補足情報の開示
データ利用はクライアント契約者に限られてはおりますが、やはり半公共性のあるデータとしてリリースされているため、ユーザーの誤解や不合理な利用を招かぬよう、データの素性に関する開示が必要かと思われます。情報ソースの保護の観点から、評価プロセスの100%の開示は難しいかもしれませんが、一次データにどれだけの主観的判断を考慮しているか、また、データ間でその考慮への相違はどれだけ違うのか等の補足情報の開示は、ユーザーが評価データとして正しく利用するためには不可欠になるかと思います。
データを提供する機関の公正性の担保
株式市場などの金融市場に関する市場分析を行い、市場予測等をリリースするには、その社会的、経済的影響を鑑み、提供機関に対しては、さまざまな規制や資格の要請等があるかと思いますが、現状ではIT調査会社や産業アナリストが市場評価値をリリースするのに必要とされる資格や特別な規制はないと思います。前回でも述べましたが、専門アナリストの主観を考慮したデータは、現状のビジネスにおいては一定の利用価値があると考えられますので、あまり強制的な縛りは企業活動に弊害となる可能性もあるので注意すべきですが、やはり、今後のデータ駆動型社会では、データの公正性の担保に対して、何らかのしくみが必要ではないでしょうか?また、IT調査会社も調査データの改ざんやねつ造につながらないような仕組みを有している、あるいは、公正に評価できる十分なデータリテラシーを有していることを自ら示す(アピールする)自助努力も求められてくると思います。
今後、さまざまなデータ開示を積極的に行うことで、オープンイノベーションを誘起させ、次世代のデジタルビジネスの発展を促進させることは日本経済にとって極めて重要であることはここ数年で社会的に認識されてきました。従って、次のステージとしては、データの公正性の担保について、さまざまな領域に新たな規制や制度が徐々に導入されてくるのでは?と、個人的には考えております。IT調査会社が手掛けているテクノロジー市場のデータに関しても、該当業界団体が担当する官公庁と協力し、市場評価データや推定値のリリースに関して、データ説明に関する何らかのガイドラインや推奨資格(強制力はないかもしれませんが)などのようなものを設定するなどの動きがあっても不思議ではないでしょう。また、このような動きから、市場データを提供するITアナリストにも、客観的評価に耐えうる分析手法の適用やその開示が求められてくると思います。