ITアナリストのデータリテラシー

 今回はITアナリストのデータリテラシーに関し、述べたいと思います。当然、ITアナリストと言っても、世のなかには、いろいろなポジションで活躍しているアナリストの方々がおりますので、あくまでも、前職での私の経験で、一般に言及するものではなく、限定したサンプリングからの所見です。一般には、”アナリスト”と聞くと、論理的で、数理統計やモデリング等による数値の扱いにも卓越しているイメージがあるかもしれませんが、私のまわりでは必ずしも、そういうタイプの人は少なく、むしろ、非論理的な人も大勢おりました(笑)。また、データリテラシーの観点でも理解に問題があると感じたケースも多々ありました。ひと昔前では、市場の年平均成長や相関係数を計算できないアナリストも散見されました。さすがに、いまではこのレベルの人はいないと思いますが(?)、今でも、自ら市場データ分析をしながらも、p値や尤度といった基本概念の理解が怪しいアナリストは少なくないと思いますし、容易とは言えない”組み合わせ最適化問題”に類する市場のカテゴリー推定を恥じらいもなく主観的に決められる果敢なアナリストやベイス推定を知らずAIや機械学習のアプリを語る上級アナリストも少なからず、おられました。

 データリテラシーが十分でないからと言って、価値あるアウトプットができないという短絡的なことではないので(実際にデータ分析が不得意でも素晴らしいレポートを仕上げるアナリストはおります)、単純に非議をすべきではありませんが、今後、5-10年ではデータ駆動型社会の到来に伴い、データによる価値創造があらゆるビジネスプロセスで要となるため、今後のIT産業やビジネス動向を展望する側にも、背後にある広義的のデータモデルの理解が求めらてくるものと思いますし、それをなくして表層的な事象をフォローするのみでは、本質を見ることは難しいでしょう。また、実務的にも、様々な分析ツールの普及により、容易に高度な分析の利用が可能になると予想されるので(長期的にはアナリストの存在価値が問われるかもしれません)、ITアナリストにデータサイエンティスト並みのスキルは必要ないでしょうが、多様なツールから得られた分析結果をビジネスの影響として読み解く、高いデータリテラシーが不可欠になると思います。

2018年05月15日