今回の新型コロナウィルスによる社会混乱においては、日々、伝えられる情報の不確かさというものを実感した方は多いのではないでしょうか?今となっては、初期に報じられた、”若年層への感染影響は少ない”とか、”何も対策をしなければ、国内で約85万人が重症化し、約42万人が死亡する恐れがある”等のセンセーショナルな報道は、何だったのかと思いますし(当然、未曾有の事態であり非難できませんが...)、今でも、毎日、TVでは、すでに報道されている二次、三次情報をパネルにして、著名なコメンテータを交えて、同じような解説を各局が繰り返している現状を目の当たりにすると、不要な動揺を避け、正しい判断をするには、我々、受けて手側が意識して情報を選択してゆくことが重要であると実感させられます。
起業家/コーチでTEDスピーカーであるDamon Brownは、TED talkでこうしたニュースの選択の問題について焦点をあてています[1]。おそらく学生さん向けの内容のようですが、ニュース情報と作成プロセスと問題について、わかりやすく説明しており、関連して対処すべき課題にも言及しています。TED talkでは、”ニュースの選び方”として、具体的に次の6つが重要であると指摘されています。
1) 報道されているニュースについて、フィルターがかかっていないニュースソースの原情報を確認する。
2) 継続して起こっているイベントについては、リアルタイムでニュースをフォローしない。
3) 大手メディアであっても、意図しないバイアスがあるので、専門家やローカルレポーター等のさまざまな角度からの情報を取り入れ、総合的に判断する。
4) 事実と意見、憶測や噂の報道を切り離す。
5) 匿名情報には注意する。
6) 得た情報をSNS等で他人に知らせる際には、必ず確証をとる。
どれも納得のゆく指摘ではありますが、私自身は、2)の指摘はあまり意識していませんでした。むしろ、業務がら、よりフレッシュな情報が価値があるような錯覚も正直ありました。指摘によれば、その根拠は、多くのメディアは、大きな事故や事件等の継続して起こっているイベントに対しては、特に有力な情報がなくても、絶えず報道を迫られるため、確証のないニュースや時には誹謗中傷につながる情報を流してしまう可能性があるため、むしろ、一定時間をおいて、同じ時刻に最新情報を入手した方が、こうした不確定な情報や後の修正による損害を避けることができるということです。現在は、割と俯瞰して問題解決に取り組まなくてはならないことが多いため、そう聞くと、確かに一理あるかもしれませんね。あと、個人的には、3)の重要性も強調しておきたいところです。私は長く情報提供をビジネスとする会社でアナリスト業務を行っていましたが、やはり、ビジネスである以上、注目を集めるために、よりインパクトのある表現やタイトルで情報を味付けする傾向はあると思いますし、メディアレポーターの方々との付き合いも多かったですが、記事の作成においては、概ねのストーリーを前提に、”Pro&Con"の立場のインパクトのある意見をサポートとして集めることも定石であるように思います。5)の匿名情報は論外ですが、明らかに事態の混乱や露出のみを目的とした情報にも注意が必要です。
今回の新型コロナウィルスの騒動では、こうしたニュース情報選択やデータ分析(前回のブログを参照)に関する将来課題が浮き彫りとなってきたように思います。Post-coronaの時代では、必要となる正確な情報にアクセスする一方で、不要な不安や動揺を排除し、健やかな生活をおくるためには、受けて手側が意識的に、かつ賢明に情報を選択することも、必要な”新たな生活様式”の一部になると言えるでしょう。
<参照サイト>
1. How to chose your news- Damon Brown:
https://www.youtube.com/watch?v=q-Y-z6HmRgI