データを実際に確認するだけでも、一般報道でははっきりしない点が、大分、すっきりしますが、さらに、データモデリングの知識やスキルがあると、格段にデータの恩恵は高まります。料理人で言えば、素材を美味く調理する包丁さばきを身につければ、レパートリが格段に広がるというイメージです(私は何でも、”料理”に例えるのが好きです..)。例えば、オーバースペックかもしれませんが、データサイエンスの専門家のサイト[3]にある、高度な確率微分方程式モデルからの提言も興味深いですし、私が属している米国のSystem dynamics Societyでは、感染モデルの研究者や実務家を対象に、定期的にネット会議の参加をInviteしているので、同分野の世界の専門家のアイディアを拝聴できますし、必要ならば議論にも参加できます。
高度な分析が必ずしも有効とも言えず、情報過多も弊害となりますので、目的やレベルに応じたデータ情報を確認及び分析すればいいのですが、私がモニターしていて、感染拡大の状況に関し、一般情報よりはやや深い理解を求めている方にとって有効になると思われる情報としては、米国のロックフェラー大学の人間環境プログラム(Program of Human Environment: PHE)のサイト[4]があります。以前、紹介いたしましたが、ここでは、diffusion modelのフレームワークを用いて、主要国の新型コロナウィルス感染者及び死者数のデータを整理して、分析しており、Libraryには、24ヵ国と主要都市のデータ分析結果がアップされています。誰でも、アクセスできますが、パラメータを解釈するために、モデル理論(さほど、難しくありませんが...)を事前にフォローする必要があり、また、Copy rightはPHEに帰属し、分析の解釈は自己責任となることには留意する必要はありますが、各データ分析を読み解いてゆくと、有益な理解が得られます。
Copy rightの都合で、ここではライブラリの結果をシェアすることは控えますが、新患者数の変化率を表すパラメータの推移を見れば、各国の報道されている状況を確認できたり、モデルが示すトレンドと照会して、各国の感染の動きを解釈することもできますし、必要に応じ、データ分析結果から自分のテーマに有益な考察を引き出すことも可能です[補足]。また、自分自身で、必要なデータを入力し、モデル分析することも可能です。
必ずしも、詳しい分析や背景を求めている方ばかりではないと思いますが、その他、外出自粛や行動規制の要請において、直観的には理解できない方は、一般向けのシミュレーション[5]を見れば、その重要性の理解の助けにはなるかと思います。今回の件に限ったことではありませんが、大きな不確定性や不安に対して、自らデータ(信頼性のある)にアクセスし、できればモデル分析をしてみることは、その後の意思決定や行動変容に大変役立ちます。特にビジネスの世界では、こうした試行を継続する者としない者では、大きな”データデバイド”[6]が生じてゆくことになるでしょう。
<参照サイト>
[1]Coronavirus COVID-19 Global Cases by the Center for Systems Science and Engineering (CSSE) at Johns Hopkins University (JHU)
https://coronavirus.jhu.edu/map.html
[2]チャートで見る新型コロナウイルス感染
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-chart-list/
[3]COVID-19情報共有 — COVID19-Information sharing
https://www.fttsus.jp/covinfo/
[4]Program for the Human Environment
https://phe.rockefeller.edu/
[5]コロナウイルスなどのアウトブレイクは、なぜ急速に拡大し、どのように「曲線を平らにする」ことができるのか
https://www.washingtonpost.com/graphics/2020/health/corona-simulation-japanese/
[6]今後は「データディバイド」が加速する...(2019年4月23日付、ブログ記事)
[補足]
例えば、NYCや韓国などの汚染拡大が大きく顕在化した地域では、複数のモデルカーブ(phase)を伴う解釈が可能で、特徴的な感染者数の推移がある等。