昨今、人工知能、ビックデータ/IoTの新潮流の期待から、IT人材の慢性的な不足が危惧されております。米国IT調査会社のガートナーによれば、2020年までに日本企業では30万人以上のIT人材の不足に陥るとのリリースがなされております。(https://www.gartner.co.jp/press/html/pr20170124-01.html)
今後のAI/IoT時代におけるデジタルビジネスのグローバル競争においては、確かにIT技術者の不足により、日本企業の行く末が大いに危惧されますが、さらに懸念される問題は、単に実務を担うIT人材の数が不足ということよりも、ビジネスプロセスの主管である経営人材のデータリテラシー、すなわち、データ分析による客観的思考に基づくビジネス遂行能力(及び習慣)にあるのではないでしょうか?。容易にわかることですが、いくら、AIアルゴリズムや機械学習の専門性にすぐれたデータサイエンティストを多数確保できても、成果や重要性を迅速に理解し、ビジネスへ展開できるマネージメント層のリテラシーが低ければ、十分に機能しないのは明白でしょう。
また、日本企業における経営人材のデータリテラシーに対する課題は決して新しい問題ではないと思います。私は、今までに多数の半導体・エレクトロニクス関連のグローバル企業の経営戦略、マーケティング、販売管理部門等の主管の方々とお付き合いさせて頂いておりますが、日系企業では、往々にして顧客情報やあらかじめ引かれたトップダウンの経営思考に合わせたビジネス分析が指向される一方、欧米系企業では、経営科学の手法を駆使して、自立した客観分析が指向される違いがあることを実感してまいりました。
さらに、半導体・エレクトロニクス関連の日本企業では、ビジネス分析を専門に行う要員は少なく、ほとんどの場合には、他の業務との兼務として行われているケースが多い一方、欧米企業では、中小規模の企業でも客観分析を専門に行っているマーケティングスタッフを配備している企業も多いと思います。ひと昔前のことですが、ITバブル時に、某大手外資半導体製造装置企業では、マーケティング分析に従事している”XXアナリスト”という肩書を持つスタッフが80名以上おり、業界を跨いだ多様なデータを収集し分析を行っていることを知り驚かされました。また、私個人も、こうした企業の方々が行ったサプライチェーンの解析等のプロジェクトに携わらせて頂きました。
AI, ビックデータ/IoTの技術革新へ企業活動が活発ですが、経営的視点では、元来のビジネスプロセスにおけるデータ分析に対する指向や体制の違いが、企業の競争優位の支配要因になるのではないでしょうか?。実際、日本におけるさまざまな学会や研究会の動向を見ても、画像認識・解析、自動運転やロボティクス等のテクノロジ先端分野ではその活動は加速しておりますが、経営系の分野では、ビジネスに係るデータサイエンスの普及の重要性の認知は未だ高くなく、経営人材のデータリテラシーの向上にはまだ時間がかかるように思います。