今月の第1週に、「第3回 AI・人工知能 EXPO」が開催されました。先般、事務局より、来場者の集計が発表されましたが、総来場者数は、昨年比2416名増の48739名となったようです。私もリサーチしてきましたが、会場も東京ビックサイト青海展示場へ拡張され、かなりの混雑ぶりで、AIビジネスに対する関心と熱気を感じました。
実際、顔や物体認識など、汎用AIの画像認識を主体とするアプリはコモディティ化が始まっていると思われ、AI認識によるセキュリティシステムの類の展示は随所で見られ、製造業では、製品外観や工程検査、故障診断や予測などのシステムや、少し前では、かなり関心を引いていた、強化学習による自動制御や学習ロボットなども珍しくなくなりました。また、音声認識、自動検索、翻訳、従業員のknowledgeのAI化などのビジネスアプリビジネスも、昨年よりは格段に増えてきました。もちろん、かなりの新ビジネスは淘汰の時代を経験するでしょうが、今後も、汎用AIの水平展開は加速し、さまざまな専門分野への市場浸透が加速するでしょう(現状、ざっくり、どういった分野にAIが浸透しているのか?をまとめたサイトがありました[1])。
一方で、こうしたAIの加速的な社会浸透の動きと日常、一般の人々がどれだけ、それを認識しているかについては、実感に乏しく、現状との解離が生まれてきているように思います。2000年代前半に、ITテクノロジが注目を集めた際には、ITリテラシーによる情報格差、”デジタルディバイド”ということがクローズアップされましたが、今後は”データディバイド”;データリテラシーによる格差が顕在化してくるのではないでしょうか?
”データディバイド”に対する懸念は、ビックデータブームが台頭してきた2010年頃にはデータリテラシーによる企業間格差として指摘されていますが[2]、最近の動きから見ると、"データディバイド”では、むしろビジネスパースンを中心に個人間格差の影響が大きく顕在化するのではと考えております。概ね、"データディバイド”は主に2つの能力の格差、すなわち、1)データの収集及びアクセス能力、2)データの処理及び分析能力の格差にあると考えられますが、1番目の能力格差は、最近の社会情勢では、データソースの”オープン化”や”透明性の担保”、一部IT企業による”情報独占”への規制、”個人情報”の保護による”データ搾取への規制”が、広まりつつあることから、徐々に個人の能力格差の影響は軽減されてゆくと期待されます。
一方、データの処理及び分析能力の格差は、教育課題としての側面が強く、個人の自助努力なくしては、格差をなくすることは難しいと考えられます。また、”デジタルディバイド”においては、概ね、ハードウェアツールのユーティリティの技能に帰着された一方で、”データディバイド”においては、当面はデータ分析手法、モデリングやアルゴリズムを中心とするソフト的な技能の問題で、個人の資質やバックグラウンドが大きく影響するため、能力育成には時間がかかり、格差がより鮮明になるとも考えられます。
”デジタルディバイド”が顕在化し、長年のビジネス課題となった”平成”ももう少しで終わりですが、新しい時代、“令和”においては、”データディバイド”の問題が加速し、あらゆる業界で、その対応を巡り、大きな変化が顕在化してくるものと予想されます。
<参考サイト>
[1]「AI活用サイトを集めました」(https://jinkouchinou.jp/)
[2] データ活用できる企業とできない企業の格差:「データ ディバイド」を解消する4つのユースケース(https://markezine.jp/article/detail/15290)