データの背後にあるものを読み解く力

 半導体関連市場の昨年度の実績調査のプロジェクトをお手伝いしているうちに、あっという間に、4月になってしまいました。長年、こうした業務を行っていて、今更ですが、”XX市場は何%、増加した。”とか、”シェアをXX%伸ばした。”などの類の表層的な分析は面白みをあまり感じません。”真理とは退屈なものである”(ニーチェ?)ということなのかもしれませんが、やはり、データの背後にあるものを探ることに分析の醍醐味を感じるとともに、社会のニーズもそちらに移ってきているように思います。業務がら、書店に並ぶデータサイエンスや数理科学に関する書籍は、定期的にモニタリングしておりますが、ここ数年、ベイズ推論に係るもの、カルマンフィルタ、状態空間モデル、また、共分散構造解析等、ちょっと前では、一般的な実務的なアナリシスでは見られなかったような内容の書籍が目立つようになってきました。やはり、従来の分析実務でも、前述のような表層的な分析にとどまらず、データの背後にある特徴を読み解くというニーズが増えているということでしょう。また、同様な視点でみれば、昨今、ブームとなっている、Deep learningも、可視化の問題は未だ残りますが、データの背後にある特徴量を抽出し、支配している規則を制御・デザインするツールであると捉えることもできます。

 先般、AI関連のエンジニア兼人材派遣の業務を行っている方とお話しさせて頂いたのですが、単に、pythonプログラミングや機械学習のオペレーションができるエンジニアのニーズはすでに減少し、一方で、ビジネスや分析の目的を導き出し、適切な特徴量をデザインできるエンジニアのニーズが格段に増加しているようです(Feature Engineering)。現状、IT人材の不足がクローズアップされ、政府もIT人材の25万人創出政策を打ち出していますが、単に表層的なスキル教育はあまり役に立たないと思います。ニーズは時代とともに変わり、スキルは必ず陳腐化し、現在のAIも例外でないと思います。一方、スキルにとらわれず、”データの背後にあるものを読み解き、そこから価値を創造するという能力”は、データ駆動型社会で求められる本質的な能力となるのでしょう。これから、真に求められるIT人材とは、このことを理解し、そのために、時代にあわせて必要なスキルを,文系・理系を問わず各レベルで自らアップデートできる人材であると考えられます。

2019年04月04日