ここ数日、新たに発覚した政府統計の改ざん問題が話題となっております。報道によると政府基幹統計の4割にあたる22統計に誤りが見つかったとのことですが、政府統計は、さまざまな分析や政策決定に利用されているため、今後も波紋はさらに広がりそうです。実際、日本経済学会は、厚生労働省の毎月勤労統計調査に関わる問題について統計委員会に対する理事会からの声明を発表しております。趣旨は、国民生活に深く影響を及ぼす政府統計の不適切な調査・作成に対する危惧と是正を促すもので、経済統計を利用している研究者・教育者を抱える日本経済学会としては看過できないというものですが、私も、自身の分析では、経済産業省の統計データを日常的に利用しており(利用データについては、幸いまだ誤りはないようです)、不正データの影響は、データに基づく実証分析や政策決定にも及ぶので、利用者にとっては重要な問題です。
このブログでも、度々、取り上げてきましたが、データ不正の問題は、データ駆動型社会においては、致命的な問題を起こしかねないので、今後は政府統計にとどまらず、広く利用されている業界統計や民間調査会社からのデータにおいても、何らかの形で質的管理の意識が高まってゆくと予想されます。データ不正の問題は様々なレベルの問題が存在し、究極的には、専門家による合法的手法による改ざんも可能ですので、防ぎようのないレベルもありますが、大半の誤判断や認識不足による不正は、システム的な相互チェックを意識的に行うことで防止できると考えます。
私も長年調査会社でデータを扱ってきましたが、仲間内では、”鶴の恩返し”と同じで、”他人の予測データの推定作業は、決して覘いてはいけない”と冗談をよく言っておりました。それだけ、クロスチェックが重要であるとのたとえ話ですが、今後はデータ管理や信頼性をどのように担保しているかを、ユーザーには積極的にアピールする必要があるでしょう。また、今回の件においても、統計を専門とする人材不足が問題発生の一因として挙げられておりますが、将来、データ駆動型社会において、類似の問題に対処するには、組織全体のデータの正確さへの認識やデータを扱う実務者はもとより、必ずしもデータ処理を専門としないステーキホルダーのデータリテラシーを向上させることが優先かと考えられます。
<参考サイト>
日本経済学会/厚生労働省の毎月勤労統計調査に関する声明 2019/1/29
http://www.jeaweb.org/jpn/OthersNewsrelease.html#20190129