2018年12月12日~14日にセミコンジャパン2018(東京ビックサイト)にて開催されました。半導体・エレクトロニクス業界の恒例のイベントですが、今年も、いくつかの打ち合わせを兼ねて、リサーチしてまいりました。トラディショナルな前工程部門は、活況を呈している中古装置ビジネスが表立ってきたことのほかに、FabのFAのスマート化の動きに対して、異業種からの参入が目立ってきた以外は、ノスタルジーを感じさせる内容の展示がほとんどでしたが、一方で、新設のスマートアプリケーションのセクターでは、ようやくセミコンジャパンでも、ロボティックスやスマートホームなどのIoT時代におけるICT産業の潮流を感じさせるものも出てきました。
半導体関係者の間では、やはり、日本の深層学習開発の一翼企業であるプリファードネットワークスが、深層学習に特化したディープラーニング・プロセッサー MN-Core (TM) (エムエヌ・コア)を発表したことが一つの目玉ではなかったでしょうか?。同社によれば、深層学習の学習フェーズの高速化に向け、深層学習の特徴である「行列演算」に最適化した専用チップMN-Coreを開発しており、MN-Coreは、近年のチップ開発で特に重要視される電力性能(消費電力あたりの演算性能)において、世界最高クラスの1 TFLOPS/W(半精度)を実現できる見込みとのことです。写真は展示品(著者撮影)ですが、記載情報では、TSMCによる12nmテクノロジーにより製造され、チップサイズは、32.2X23.5mmで、Peak Performance(TFLOPS) : 32.8(倍精度) / 131(単精度) / 524 (半精度)、消費電力(予測値):500Wとあります。また、私が伺った話では、現状のパフォーマンスは、今までの画像認識を主体とするアプリケーションに対する評価で、同社の目標の一つである、パーソナルロボット制御など、異なるアプリケーションに対応するにはまだまだ開発やチューニングが必要であるようです。さらに、同社は、2020年春の稼働に向け、MN-Coreによる新しい大規模クラスターMN-3を構築する予定であり、1000 nodeを超える専用サーバーからなるMN-3の計算速度は、最終的に2 EFLOPSまで拡大することを目標にしているとのことです。また、それ以降は、得意分野の異なるMN-CoreとGPGPUを組み合わせて利用することで、より効率的な計算環境の構築を目指しており、アプリケーションに応じたソリューションを考慮していると考えられます。また、今回、同時に、NM-Core Board、MN-Core Serverの出展もありましたが、いずれも、当面は自社の研究開発用途を主体とするとのことです。
グーグルがTPUを発表以来、既存半導体ベンダー以外の企業からの深層学習向けチップのリリースが相次いでおりますが、このブログのテーマであるデータ社会との接点を巡って、半導体を含むICT産業は、今後、5~10年で、益々異種混合化が加速してゆくでしょう。今回のセミコンジャパンでは、その胎動が少し見えてきたように感じました。
出展:プリファードネットワークス/ブース出展より