半導体産業のサプライチェーンのアンバランスは、増加している?

 早いもので、今年もあと2ヶ月をきりました。今年の半導体関連市況を振り返ると、ここ数年続いた好期から調整期への動きが顕わになった年かと思われます。それ自体は、通例のことなので、特別に目新しくはありませんが、同時に、半導体産業におけるサプライチェーンの広域的なアンパランスの増加が、ここにきて顕在化してきたように思います。従来のような大幅なアンバランスではありませんが、筆頭となるメモリ市場(NAND及びDRAM)では、ここ数年の供給不足から過剰に至り、それに伴い、昨年では一部の生産能力不足が問題となった製造装置市場も出荷の遅延及び受注軟化が顕れ、大幅な不足が懸念されたシリコンウェハも、大手メーカーでは長期契約により2020年までは安定受注が確保されているとのことですが、一部で供給過剰が懸念され始めております。一方、昨今では、一部でCPUの不足や半導体ガス材料のヘリウムやフッ素ガスの不足が起こっているようで、半導体サプライチェンのアンバランスは増加しているように見えます。

 ここ数年、いわゆる”スーパーサイクル”を支持する方々の中には、

*ビックデータ社会に向けたIoT基盤の普及により、センサーやデータ処理用デバイス、およびデータセンター向けメモリーなどの長期的な安定需要が見込める。

*寡占化が進んだため、無理な競争がなくなり、適切な生産レベルが維持される。

*大型投資できるベンダーが限られているため、透明性が高まっいる。

などの理由により、市況は安定するというご意見も散見されました。一部は妥当と思われ、決して、完全否定するものではありませんが、上の現状を踏まえると、個人的には、必ずも一筋縄では解釈できないと考えております。例えば、一考察としては、寡占化及びlean-manufacturingの加速による在庫圧縮はサプライチェーン上のトータル在庫量を減らすので、急激な受注量の変化に対してアンバランスを増強しやすい。また、IoT基盤の普及に伴う新たな需要は、サプライチェーンの上流企業には不透明で、予測が難しい(期待値が支配的となる)。さらに、真に適正な在庫需要量や生産・投資計画に対する意思決定に遅延が生じる(意思決定遅延の増加)。こうしたことも、 アンバランスの増加の要因となります。このようなアンバランスの問題は、古典的なサプライチェーンの問題として、ある程度捉えれるような気もしますが、直面しつつある、次世代の半導体産業のサプライチェーンの問題は、来年以降、重要な研究テーマであると認識しています。

2018年11月23日