TSMCの業績下方修正は意味深い?

 台湾の半導体受託生産の世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、18日に2018年12月気の売上高見通しを引き下げ、前回見通しの前年比10%弱増から約6%増への下方修正となりました。下方修正自体は、市況見通しの変化によるもので、よくあることですが、注目すべきは、その理由です。会見におけるCEOのコメントによれば、下方修正の直接の要因は仮想通貨の採掘(マイニンング)に使う、半導体の需要の落ち込みとの報道です。ここ数年では、ビックデータ/IoT、Alの台頭によるデジタルビジネスが、今後の半導体需要の牽引役となるとの期待が広がり、話題としてはホットになっておりましたが、エヌビディアなどの特定企業以外では、ITの下流に当たるデジタルビジネス企業の動きと半導体、電子部品等の上流企業のビジネスへの影響が、いまだよく見えなかったかと思います。今回の発表は、実際に、デジタルビジネスの一例の変動が、半導体製造ビジネスへ与える具体的なインパクトを教示した、数少ないケースではないでしょうか?(しかも、そのインパクトは、年成長率の約4%程度と大きい)個人的には、或る意味、エポックメーキングなニュースだと思いますが、さらに深読みすれば、次の2つの上流企業への影響の可能性を意味していると思います。

*今後も、さまざまなデジタルビジネスの台頭が、上流企業のビジネスに、従来と異なった影響を与える。

*デジタルビジネスの到来は、長期的には新しい需要の創出につながるが、市場の不透明性が増し、オペレーションや経営判断の遅延が増加する一方、台頭期の高い成長のブーム(及びバースト)により、短期のビジネスボラティリティは高まる。

 今回のニュースは、”スーパーサイクル”のコラムでも、述べましたが、デジタルビジネスにより新たな需要と市場の安定化は別問題と捉えるべきとの事例とも言え、ICT企業は自社の市場のビジネスが、期待されるデジタルビジネスの台頭により、どう影響されるのかを、毎回、注意深く考察する必要があると思います。その折には、モデル分析によるシミュレーションが有効となると考えています。

2018年10月19日