昨今、”将来、AIにとって代わられる職業は何か?”とか、”AI時代にビジネスパーソンは生き残れるか?などの記事をよく目にします。大元はオックスフォード大学がリリースした研究論文に基ずいていることが多いですが、実際に、”AIの普及により、どの仕事が、いつなくなるか?”などの予想は難しいでしょうが、多くの仕事が変革を強いられることは間違いないでしょうし、医者、弁護士、コンサルタントなどの専門性の高い職業も例外ではないでしょう。企業内外で活躍している、市場やビジネス分析を担っているビジネスアナリストの業務の内容やプロセスについても、ここ数年で大きく変わってゆくでしょう。予想される変化を一言でいうと”客観的事実に基づく、多面的な迅速な分析・評価する能力”が求められてくると思います。
ちょっと、本題からそれますが、私は、最初の大学院時代及びキャリアの最初の5年間は、電子材料の研究の仕事に従事しておりました。その際に感じたことは、優秀な材料研究者の方々には博学な人が多いということでした。新材料の研究プロセスには、材料のキャラクタリゼーション(特性評価)が重要となります。研究者は、必要に応じて、作成した新材料の、結晶構造、電気的特性、光学的特性などをさまざまな手法を用いて評価しなくてはなりません。このため、優秀な材料研究者は、X線解析、TEM、赤外線分光、クロマトグラフィー、ラザフォード後方散乱等の物理・化学分析手法とそのセオリーについて熟知しています(残念ながら、私はそのレベルまではまったく達していませんでした...)。もちろん、それぞれの分析手法を専門としている物性及び化学の研究者が別に存在しますが、材料研究者はそれぞれの専門家と議論及びコラボレーションしながら、新材料の特性を明らかにし、新たな材料開発を推進して行きます。
その後、私は市場分析やモデリングの業務に長く従事しておりますが、材料研究と類似のニーズを常に感じておりました。すなわち、市場やビジネスをできるだけ正確に把握するには、”客観的事実に基づく、多面的な迅速な分析・評価”が不可欠であるということです。そのためには、分析者には、材料研究者のように、必要に応じて、計量経済学、記述統計、シミュレーション、戦略フレームワークなどを用いて多面的な分析アプローチが必要とされます。しかしながら、現状のビジネスの現場では、必要があれば各専門家の助言も仰ぎながら、縦横断的アプローチができる実務家(ビジネスアナリスト)は極めて稀少です。そして、おそらく、ビックデータ/AIの普及によるデジタルビジネスの時代においては、IT技術者と同様に、こうした広域なアナリティカルスキルを有するビジネスパーソンのニーズが高まってゆくでしょう。こうしたパースペクティブは、HTM リサーチ設立のモチベーションのひとつにもなっており、さまざまな、活動やコラボレーションを通じて、少しでも次世代に必要な企業人材の育成にも貢献できることを目指しております。